24 August, 2021

段ボールアーティスト「島津冬樹」の軌跡とこれから
– 前編 –

ABOUT 「島津冬樹」

段ボールアーティスト「島津冬樹」をご存知だろうか?
世界中を巡りながら現地で段ボールを収集し、リプロダクトする。聞き馴染みのないそのクリエイティブは、彼が確立した独自のスタイルだ。

誰もが捨ててしまうものを、新たな視点で見つめ直し、もう一度息吹を吹き込むことで、愛着の湧く作品に生まれ変わる。そこには綿密に計算された美しいモノとはまた別のエモーショナルな魅力がある。
彼が段ボールアーティストとして辿ってきた軌跡、そしてこれからの活動について話を聞いた。

段ボールの魅力

———そもそも段ボールにハマったきっかけは?

島津:「大学時代、使っている財布がボロボロになってしまい、買うお金もなかったので間に合わせで家にある段ボールで財布を作ったのが最初の取り組みでした。作った当時は一ヶ月くらい保てば良いかなと思っていたのですが、いざ使ってみると1年ぐらいは使えて、その強度の高さにびっくりしたんです。 同じ年に大学で自分の作品を販売できるフリーマーケットが開催されることになって、そこで段ボールの財布を出してみようと思いました。その時初めてダンボールを各地で拾い集めてみたのですが、モノづくりの視点から改めて段ボールに触れてみるとこんなにも多くの種類やデザインがあるのか、と気づきがあってそこから本格的にダンボールに興味を持つようになりました。実際に作った財布を出展してみると思いの外面白がってもらえて、ありがたいことに初日で完売したことも何か手応えのようなものを感じましたね。」

「翌年、人生初めての海外旅行でNYに行く機会があり、そこでも段ボールを集めてみようと街を散策していたら箱のデザインや質感、捨てられ方なども日本と全然違うことに気づきました。色んな国からきた果物や野菜の段ボール、見たことのない柄やフォントのものなど、国を跨ぐだけでこんなにも違いが感じられるのか、とカルチャーショックを受けて”段ボール拾い”がライフワークになっていきました。」

———段ボールのどういった点に惹かれましたか?

島津:「段ボールって思いが込めれているんですよね。ちょっと昔の段ボールとかだと開けるフラップのところに”いつもありがとうございます”と メッセージが入っていたりして、届ける人への思いが見えたり、贈り物としての意識が強くて人間味が感じられたんですね。 デザイナーがデザインするものも当然格好良いんですが、どこか隙がない印象というか。例えば農家の人たちがデザインしたものって、どこか野暮ったかったりするんだけど、その分温かみがあって、そういった温度感に惹かれるんですよね。」

デザインとサスティナブル

———サスティナブルという言葉が世の中を席巻し、モノづくりの在り方、ユーザー心理が問われる時代となりました。 そうした背景も今のスタイルに起因していますか?

島津:「もともと段ボールという素材自体がリサイクルされるものとして既に認識されていたこともあり、当初から意識はしていました。一方でそうした認識や機能が既にある段ボールに対し、わざわざ自分がリプロダクトをする意義はあるのか?という点は引っ掛かる部分でもありました。むしろ僕が段ボールを使ってモノ作りをすることは、既にあるリサイクルの循環を崩してしまうことになりかねない、という懸念もあったんです。なので自分の作る作品は”リサイクル”や”環境に良い”などの言葉は一切使わないようにして、全く新しい循環のモノとして提案することにしました。あくまで段ボールに魅了された僕がアップサイクルな切り口でモノづくりをしているだけ、というか。あと”再利用されているから良い”というより、まずは自分自身が楽しむことだったり、デザイン的に良いと思えるものを出すことが重要だと思います。」

———島津さんのプロダクトには手作りならではの暖かみがありつつ、どこかモダンな空気を纏っていると感じます。モノづくりをする上で意識されて いることはありますか?

島津:「僕が目指すのはある意味ファッションに溶け込む、ということであって、例えばヴィトンの服に段ボールを合わせる、みたいな。環境への意識からくるモノづくりというよりも、ファッションの中にあることで、段ボールに対する”憧れ”という感情を抱いてもらえたら、という考えがあります。 段ボールだけどこんなにお洒落なんだ、とか感度の高い人たちに使われるようになったりしたら面白いなと。だからダサいと思われるようなモノは作らないようにしようと、形だったり使う箱のデザインだったりは意識しています。

———作り方の面でモダンに見えるように工夫されてることはありますか?

島津:「そこは見え方だと思うんですよ。例えば僕の作品は雑貨屋さんに置いてあれば、悪い意味で馴染み過ぎてしまうと思うんですよね。 そうではなく、例えば百貨店だったり、セレクトショップだったり、ファッション的な感覚や背景がある場所に置いてもらうことで段ボールとの良いギャップが生まれ、引き立つと思います。そうした空気感を作ることを重要視しているので、商品を卸すにしても世界観が合わないところはお断りすることもあって、どんな空間にどんな見え方で紹介されるのかは意識しているところですね。」

「実際に自分のウェブサイトでもダンボールの什器の上に段ボールを置くのではなく、敢えてタイルの上に置いてみたり、水の上に浮かべてみたりした写真を掲載しています。そうすることで段ボールの魅力が引き立つと思うので、こうした見せ方も意識しているところです。」

後編へ続く

島津冬樹 FUYUKI SHIMAZU
1987年生まれ。多摩美術大学卒業後、広告代理店を経てアーティストへ。2009年の大学生在学中、家にあった段ボールで間に合わせの財布を作ったのがきっかけで段ボール財布を作り始める。 2018年自身を追ったドキュメンタリー映画『旅するダンボール』(監督:岡島龍介/配給:ピクチャーズデプト)が公開。著書として「段ボールはたからもの偶然のアップサイクル」(柏書房)「段ボール財布の作り方」(ブティック社)がある。

 

Instagram:@carton_wallet

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