
段ボールアーティスト「島津冬樹」の軌跡とこれから – 後編 – 共作した配送ボックス
前編をご覧になってない方はこちら。
「注文して届いた段ボールが捨てずに使えたら面白いんじゃない?」チーム内のそんな一言からこの企画がスタートした。
ECを中心とした私たちにとって、商品が届く瞬間がお客様との直接的なコミュニケーションが取れる唯一の瞬間。
“オンラインでモノを買う”という、どこか希薄に取られてしまいそうな行為が、むしろ心に作用する豊かな体験できれば。 兼ねてからあったそんな思いに”島津さんのクリエーション”というピースがハマり、満場一致で企画が動きだした。
とはいえ1から箱をデザインして形にするのは容易ではない。
そこからは島津さんとの100を超えるメールのラリー、アートディレクターや製版業者も含めた打ち合わせを何度も経て、ようやく誕生した段ボール。 組み立てるとサコッシュになる仕様だ。
多岐に渡る彼のプロダクトの中からサコッシュを選んだのにも理由がある。「都市とアウトドアの交錯」を掲げる私達にとって、“シーンを選ばずに使えること”が重要な要素であり、その上でファッション的な文脈も含まれていたのがサコッシュだった。
ALIGNで買い物をしてもらった方には、サイズに応じて異なるデザインの段ボールが届けられる。それを組み立て、付属のパラコードとクリップをつけるとサコッシュになる仕様だが、色を変えてみたり自身でアレンジして楽しむことも可能だ。
そもそも作るのは必ずしもサコッシュである必要もない。 “自分で作り、それを使う楽しみ”そんな島津さんならではのアップサイクルな感覚や視点を、この企画を通して感じてもらえたら幸いだ。
これからの活動について
——— 最後に、著名なブランドとのコラボレーション、様々なメディアでの露出など、徐々に島津さん自身、また段ボールクリエイティブという概念が世の中に浸透してきているように思います。今後の展望について教えてください。
島津:「まだ段ボールに目を向けることへのきっかけだったり、段ボールの魅力という部分が広く認知されていないとは思っていますので、 “捨てられているものに見向きもしない”という現状から、捨てられているものからも可能性を感じてもらえるように活動していきたいと思っています。 そのきっかけとして段ボールは僕が見てきた中でもすごくストーリーがあるし、魅力的な素材である、ってことをとにかくもっと伝えていきたいですね。あとは段ボールの魅力もそうだし、不要なものから新しいモノを作る、それを使う豊かさ、というのは日常をちょっとだけ楽しく彩ってくれると思うので、何も段ボールに限らずそうした体験の場を提供できるように活動していきたいです。
個人の活動としては段ボールの家を作ってみたいですね。”段ボールの家”というとホームレスの方が住んでいるような家を想像してしまうかもしれないけど、段ボールでもこんなに格好良い家が建つんだ、ということができたらいいなと思っています。」
第一印象はどこか飄々としていて、知的な印象の島津さんだが、段ボールの話になると好奇心旺盛な少年のように語る姿が印象的だった。彼が今後どのように段ボールと向き合い、表現を追求していくのかが非常に楽しみだ。
島津冬樹 FUYUKI SHIMAZU
1987年生まれ。多摩美術大学卒業後、広告代理店を経てアーティストへ。2009年の大学生在学中、家にあった段ボールで間に合わせの財布を作ったのがきっかけで段ボール財布を作り始める。 2018年自身を追ったドキュメンタリー映画『旅するダンボール』(監督:岡島龍介/配給:ピクチャーズデプト)が公開。著書として「段ボールはたからもの偶然のアップサイクル」(柏書房)「段ボール財布の作り方」(ブティック社)がある。
Instagram:@carton_wallet