
FEO for ALIGN
古着のクリエイティブリユース
ポップアップなどで店頭にいると「最近、欲しいと思える服が少ないんだよね..」と声を漏らす服好きの方が増えたように感じます。確かに、自分自身もファッションに深く魅了され、狂信していた頃と比べると、"服を見てときめく"という機会が随分減ったなと。
しかし、そんな中でも勢いを感じるのが"古着"。
様々な情報にすぐにアクセスでき、消費されてしまうこの情報社会において新品のブランドが優位性が出しづらくなっていると言われています。
その反動か、偶発的な出会いと、1点1点に個性が溢れる古着を着たい、というニーズが増えたのではないでしょうか。
では、ALIGNでも古着を取り扱うかというと、それは文脈的に唐突ですし、そのまま仕入れても野暮さが目立ち、今のラインナップとの親和性が低いだろう、と踏みとどまっていました。
そんな中、Instagramのアカウントを掘っていた際にふと気になるアカウントを見つけました。
"FEO(フィオ)"というロンドンに拠点を置く、グラフィックアーティストのものです。
いわゆるストリート的エッセンスや、タイポグラフィに見るストイックでミニマルな空気感、アート作品のようなコンテポラリーな雰囲気、彼の作品からは様々な要素が汲み取れ、独自の魅力を放っていました。
見たところ日本人のフォロワーはおらず、当然日本には未上陸。直感的に「この人となら、特別感のある面白いことができるかも」と思いました。
早速コラボオファーのDMを送ってみると、快く引き受けてくれて、そのまま取り組みの方向性について打ち合わせをすることになりました。
古着のことが頭の片隅にあった当時の私は、 それを活用した取り組みができないか、と相談した結果、ALIGNだけのオリジナルデザインを作ってもらって、集めた古着の数々にスクリーンプリントを施してもらうことになったのです。
極力古着らしくない雰囲気に仕上げたいと思い、良い意味で”違和感”を感じられるようなアプローチを目指しました。
既にある無数の彼の作品の中からどうオリジナルデザインに落とし込んでいくか。そこからは互いに提案と修正を繰り返し、デザイン案を絞っていく日々でした。そして、試行錯誤しながら出来上がったのがこの3つのデザインです。
彼は愛犬家としての1面もあり、一つ目のグラフィックは飼っている”キッパー”をモチーフにハイヒールを履かせたシュールなデザインが採用されています。ここ最近はキッパーの特徴を誇張して描くことに夢中なのだそう。
その独特なアプローチとは裏腹に、上下のテキストは整然としてどこかシリアスな雰囲気。今回 東京とロンドンを繋いだこの取り組み自体をタイポグラフィに落としこんでもらいました。
2つ目のデザインは「FEO 」という文字がカリグラフィーで大きく描かれていて、それをピクセル化してブロックにしています。その下には「SUSTAINABLE PRINT, SUSTAINABLE DESIGN」とあり、アップサイクルを表すワードが無限記号の形に整然と並べられています。
3つ目のグラフィックは、Helvetica Neue Condensedで書かれた「FEO REPRINT」の文字と、巨大な手の指が世界を握っているデザインです。この3×3インチのデザインは、現在進行中のFEO REPRINTプロジェクトの目印として、いくつかの衣服の袖にプリントされています。
どのグラフィックもFEOのエッセンスが遺憾なく発揮された、モダンでユニークなデザインとなりました。
ここまで来た段階で日本で集めた古着を彼のアトリエに送り、スクリーンプリントされたものを再度日本に戻してもらって、ようやく完成となりました。
着古されたことで掠れたプリント、色褪せた生地。
古着ならではのそうした特徴がむしろデザインとなるような、良いコントラストが生まれたと思います。
どこか違和感があるものの、作品としてまとまっている。この雰囲気はFEOならではの魅力だと思います。
ミニマルファッション全盛の今だからこそ、こうした1点モノを取り入れ、自分だけの特別感を味わっていただければ幸いです。
彼との取り組みも無事形になり、互いに納得のいく仕上がりとなった一方で、一層のこのコレクションを楽しんでもらう為には、もう少しFEOのことについて知っていただいた方が良いと思いました。
彼の作品が放つ魅力は何によって構成されているのか、そしてこの先どこへ向かおうとしているのか、そんなバッググラウンドに迫る簡単なインタビューを実施したので、是非最後にこちらもご覧ください。
____簡単に自己紹介からお願いします。
「こんにちは、フィンです。サウス・イースト・ロンドンに住む25歳のグラフィックデザイナーです。イギリスの田舎で育ち、キングストン美術学校でグラフィックデザインを学ぶためにロンドンに移り住みました。今は自分のアトリエを持ち、グラフィックデザインに情熱を注いでいます。」
____FEOの名前の由来は?
「FEOは私のイニシャルです。小さい頃からグラフィティタギング(街のあちこちに見られるスプレーペンキで描かれた落書きの一種で、特に個人や集団のマークとされるものを描いて回ること)やレタリングに興味がありました。ですので、FEOは自然と私のグラフィティタグになり、このタグを様々な場所やモノを対象に描きました。」
____デザインはどのようなものからインスピレーションを得てますか?
「インターネットからのインスピレーションが、私のアイデアのきっかけになっています。Instagram、YouTube、Pinterest、Are.naを毎日のように使って、消費と創造を繰り返しています。一度、創造的なひらめきを得たら、それに対する自分の視点を、タイポグラフィー、プリント、Tシャツ、イラストレーションという形で表現します。
私の作品は2つのスタイルで構成されています。ひとつは、派手で雑多なものの美学。2つ目のスタイルは、グラフィックデザインを専攻していたこともあり、整然としたグラフィックデザインのアプローチです。タイポグラフィーやイラストレーション、あるいは映像のトランジションなどのレイアウトに特にこだわります。
グラフィックデザイナーとは、問題を解決する職業であるという暗黙のルールがあるように思いますが。私の仕事はそうではありません。私が作るのは、あくまで美的なものです。ポスターでも、Tシャツでも、トートバッグでも、絵画のように(面白いことにFEOはスペイン語だと「醜い」という意味なのですが)イケてるから欲しいと思ってもらいたいのです。」
____FEOの今後の展望について教えてください
「FEOの未来は、クリエイティブであり続けること、そしてアートを作り続けることです。私の作品には様々な要素があり、それぞれのサブジャンルに小さな目標があります。例えば、私の創作過程を撮影したムービーを作り続けたいと思っています。また、より多くのブランドとスクリーンプリントのコラボレーションをすることも、私の目標のひとつです。私の専門分野には、さまざまなクリエイティブな側面があり、それは私にとってさまざまな方向性があることを意味するので、とても幸運でした。もし、すべてを網羅するような目標をひとつ掲げるとしたら、自分のクリエイティブなスタジオを持つことでしょう。プリントしたり、絵を描いたり、コラボレーションしたり、コーヒーを飲みに来たりできるような場所を作りたいです。」
____日本のみなさんに一言
「まず、ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。今回のコラボレーションは、私にさらにクリエイティブな活動をする機会を与えてくれました。アップサイクルされた服は、デザイナー、前の持ち主、歴史などの様々なストーリーを伝え、ファストファッションブランドにはない価値があります。私は皆さんに、アップサイクルの扉を(そしてワードローブの扉も)開き、ファストファッションの大流行を助長することなく、クリエイティブにアップサイクルを行うデザイナーやクラフトマンをサポートすることを推奨します。」
HAVE A LOVELY DAY.
FEO